丘の恐竜
乾 加津也

いるわけがない
いつもの夕飯時のはずが
食卓に投げ出される、突拍子もない弟の主張
あの丘で恐竜を見た
家族みんなの一笑、からかいに
きみはひとり意地を張りつづける

 うっすらとほの暗く
 でこぼこ丘は、ひとの入らない繁みで覆われ
 だれかが、通学に近道で小路がとおり
 不審な人が出てはあたりに柵と注意書き
 ゴルフ練習場のために半分が切り崩されて駐車場

そして今やきれいさっぱり
面影もない


あの丘の恐竜は
もう散り散りの、ひととき馬鹿げた家族の
証明(かけら)となって眠りつづける


自由詩 丘の恐竜 Copyright 乾 加津也 2014-07-30 22:12:12
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