ノート(誰も 何も)
木立 悟






風が風で
風のままに風で
風以外のものすべてを
風に透している


焦げた港
暮れの青と水
人音の無い径
海に満ちる耳


空が空を剥がしてゆく
銀の彫像から
銀の煙が噴き出している
浪の頂を灰が跳ねる


跪き
水たまりの水を飲み
誰もいない窓をすぎ
誰もいない沼に着く


からだのあちこちが
むしり取られるように痛い
水の端から
水ではない視線が向けられている


斜めに昇る銀河 むらさき
空を覆う破けた弧
棲むものの無い方へ押し寄せる霧
誰も 何も顧みぬ背


白と黒の粒子のなか
今きた径を帰りゆく
足音さえ無い夜を
歩いてゆく


























自由詩 ノート(誰も 何も) Copyright 木立 悟 2014-07-28 10:01:52
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