疲労の英雄
前髪



その男は疲れ顔


しがない普通のサラリーマン


満員電車に揺られて帰る


とりわけ混んでるわけでもないが


なんの配慮か座れない


改札通るサラリーマン


お先を譲るサラリーマン


さぞやつかれているのだろう と


気ばかり使うサラリーマン


学生時代はクラスのひとり


野球チームのメンバーのひとり


家では4人家族のひとり


ゼミでも普通の学生のひとり


会社じゃ社長の手駒のひとり


何かをしようと言うわけでもなく


もしかすると何かを為したいのかしら


そんな考えひとまず置いて


チームプレーに徹するのみの


集団を上手く動かすために


自ら何かのひとりになって


謙虚に動くサラリーマン


周りに比べて10程老けて


見た目に比べて10程老けて


貫禄だとか笑わす男


そんな男は疲労の英雄


誰も知らない配慮の英雄


何も実らぬ 孤独の英雄


来世を見つめる空虚な英雄


自由詩 疲労の英雄 Copyright 前髪 2014-07-26 13:18:53
notebook Home 戻る  過去 未来