零ふたり
凍月




緩やかな月明かりの下
幻聴なのかと疑ってしまう
微かな電灯の震え
君と僕との待ち合わせ

君の姿が月に照らされ
僕の姿は闇に浮かぶ


 「今なら、死んでも良いな」
僕から君への誓い

  「死なないで…悲しくなっちゃうよ」
君から僕への死刑宣告

愛おしい毒が廻ってきて
胸が苦しくて泣きそうな気分

 「手と手が一番美しくなるのはどんな時?」
  「私と君とが繋がった時」
僕と君との合い言葉
夜に日傘を差してた君が
くるりと回って言った事

  「月の歌は孤独の歌。でも私には今あなたがいるから」
僕が傘を差す理由を問うと
君はそう言って再び回った

 「人は独りだっていう真実を、君といる時だけは忘れられる」
  「君といられる間だけは、私は私でいられるの」

月の孤独が二人を抱く
それぞれの孤独がそれぞれを包む

暑い夜に出会う冷たい体温
お互いの命を確かめ合うのが
僕と君との素敵な儀式


悲しい夜に溶けてゆく二人
悲しい夜に溶けてゆく独り
悲しい夜に溶けてゆく雫
悲しい夜に溶けてゆく零



月下
もう何の音もしない夜







自由詩 零ふたり Copyright 凍月 2014-07-22 21:42:14
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