甘く切ない思い出
花形新次

可愛い事務の女の子は
他の人と話すのに夢中で
僕が見ていることに
気づいていなかった
その時
彼女は右のワキを掻いた左手の臭いを
恐らく、恐らくだが
無意識のうちに嗅いだ
デリケートな僕が受けた
衝撃は激しく
一瞬にして
彼女が嫌いになった

が、しばらくすると
それは甘く切ない思い出に変わり
今では
彼女がワキを掻くのを
待ちわびるようになった


自由詩 甘く切ない思い出 Copyright 花形新次 2014-07-16 19:24:33
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