数字
はるな


(数字が壊れている)

夏で、いつもより心臓がゆっくりうごいている。
わたしたちは逃げてきた、盗んだものをぜんぶ
忘れるために。おもいのほか空気はおもたくて、
指が濁ってる。天井を塗る途中で、ばらばらに
散っていった。青色と白色の混ざったところに。

冷蔵庫には冷えた意味が、ならべて座っている。
教育された男の子と女のこみたいに、つめたく。
わたしはたぶん走りたかった。でも、それだと
あまりにはやく心臓が打ってしまう。

声はなんと記せばよいだろう。どんなにしても、
嘘か冗談になってしまう。気持にしても、夢に
しても嘘か冗談になってしまう。なびかせても、
切り刻んでも、積みあげても、彩色したっても、
嘘か冗談に嘘か冗談に嘘か冗談に嘘か冗談に嘘

わたしたちは逃げてきた、忘れないために。
壁ぎわに座ってみていた、あるいはそこからは
見えなかった、すべてのことを忘れないために。
知りたがって、知れなかった、そのことたちを
忘れないために。そうして知ってしまった全て
を、忘れるために。


自由詩 数字 Copyright はるな 2014-07-16 02:37:52
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