壊れないもの
凍月


少女は欲しかった
壊れるものしか知らなかったから
ただ
壊れないものが欲しかった

父から貰ったテディベアは
引き取り手の叔父に引き裂かれた

父は車にはねられて
人形のように手足が変な方向に曲がってしまった

叔父はもはや人間ではなく
怪物にしか見えなくなった


少女の世界は凍り付き
音を立てて壊れ始めた


ただ、壊れないものが欲しかった
そんなものが存在しなくても
形あるものは壊れると
形の無い心さえ
壊れるのだからと
頭では理解しても
それでもやはり欲しかった



彼女は知らなかった
形あるものが壊れた時
直せるものもあるのだと

彼女は知らなかった
心が壊れたとしても
治る事だってあるという事を





自由詩 壊れないもの Copyright 凍月 2014-07-10 23:06:16
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