綺想纏概-序 当て字に即いて
六崎杏介
綺想を詩文に纏わせる概念の一つとして、今回は「当て字」を見てみようと思う。
例えば「満月」の満を万として「万月」とする。
例えば「太陽」の太を帯として「帯陽」とする。
例えば「陽光」の陽を羊として「羊光」とする。
一文字変えただけで月は夜空中にひしめき合い、太陽は帯状の光のカーテンになり、
陽光は不可知の羊の可視光線になる。
こういった当て字を日常的に詩行に取り入れる事によって、私達の想像力はまったく豊かなものになりませんか?そこでは月が増えるのも、減るのも墜ちるのも。何の不自然もない紙上の街のマーチに還元されるのです。