プレイヤー
凍月



まるで息の音が止まったみたいに
音楽が終わった
僕はCDを取り出して
適当に歌ってケースに戻して
他の何かを聴きたがる
音楽に身を浸して
全て忘れてしまおうか
微かな浮遊感と共に
掠れて消えてしまおうか


夜が一滴落ちてきて
雑音を全部、塗り潰す
孤独になってみるといい
一度黙ってみるといい
生きている事すら忘れよう
いつか死ぬ事も忘れよう
音階や歌詞は分からないけど
今ならよく眠れそう


まるで鼓動のような音で
音楽は始まった
僕は音量を微調整して
右耳と左耳から脳に流れ込む音を
何も考えずに受け入れる
メロディーの川に飛び込んで
海まで流されてしまおうか
歌詞の森に分け入って
彷徨い消えてしまおうか


月の欠片が落ちてきて
雑念を全部、砕くんだ
生きる恐怖は忘れよう
いつか死ぬ恐怖も忘れよう
音階も歌詞も分かるけど
僕が誰なのかは分からない
孤独になってみるといい
一度黙ってみるといい


夜空がゆっくり落ちてきて
僕らを全部、包み込む
孤独になってみるといい
夜の雫を浴びるといい
生きてる事すら忘れよう
いつか死ぬ事も忘れよう
音階も歌詞も分からないけど
曲の景色は瞼の裏に


夜が一滴落ちてきて
僕は祈ってみたけれど
僕のプレイヤーは壊れてる
同じ曲だけを繰り返す
停止ボタンを押しかける
指は何故だか震えてる
夜が空間に浸透して
僕らはもう何も見れない
何回聞いてもこの曲の
名前だけが思い出せない
孤独の夜に浸かるのがいい
一度黙ってくれないか
孤独になってくれないか
僕は壊れた祈る人
頭蓋の中で反響する同じ曲
延々と曲を流すのは
僕の壊れたプレイヤー
孤独な僕はプレイヤー
孤独な僕の祈る人





自由詩 プレイヤー Copyright 凍月 2014-06-28 22:32:07
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