ひとつ 金緑
木立 悟






雨の名残りが漂っている
光がすべて上を見ている
半分は暗く
半分は泳ぐ


蜘蛛が青空をめくり
午後をのぞいては閉じる
空は泡に分かれゆく
見るものの目に分かれゆく


よびこ こだま
現われを捨てた現われに
触れる手のひら
羽ほどく手のひら


雨のまぶしさにひとつ目覚め
ふたつ目覚め ふたたび眠る
光の奥の 
小さな音


心から離れ 流れるものが
どこか知らぬ珠を洗う
うつぶせの鏡のそばを
金に緑にすぎてゆく


無数の穴のあいた壁から
景はしたたり落ちてゆく
外へ外へ光は吸われ
内には小さな曇が残り
たたた たたたと またたいている


空への応えをはぐらかし
はぐらかし そらし 避けながら
静かに波打つうなじの汗の
透明な角度を受け入れる


ほどけた羽が午後の陽に触れ
糸の影に降りつづく
誰もいない金緑の径
片目から片目へそそがれてゆく























自由詩 ひとつ 金緑 Copyright 木立 悟 2014-06-18 22:44:44
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