広場の朝_Ldn.
藤原絵理子
夜が明けたよ
夜更けまで降っていた
淋しい雨も いつの間にか上がって
ギャラリーの軒下に逃げていた鳩たちが
ライオンの頭に集まり始めた
いろんなことがあったんだよ
いわれのない憎悪や
知らないものへの恐れ
分かりあえるまでの
いくつものすれ違いが
「あたしたちは みんなで
ひとつの船に乗って
宇宙の彼方へ向かう 旅をしている
この船からおりることはできないんだよ」
メンフィスのおじさんはブルースを歌ってる
モスクワの若い画家はターナーを論評してる
エルサレムの商人は夢見るように噴水を眺めてる
ボンベイの婦人は鳩に餌をやってる
ホンコンの留学生はfish & chipsを食べてる
そして
あたしは
この朝の光と ざわめきに浸って
さとうきび畑を吹きぬける
風の香りと 囁きを思ってる
ひとりひとりが
しあわせの宇宙をもって
ゆるやかに回転しながら踊りだせば
やわらかな その宇宙は
みんなまるくなる
みんな好き勝手に
それぞれのしあわせを
しあわせだと感じている
そんな この広場の風景が
あたしを癒していくんだ