顔の無い人たちの憂鬱
opus

夜中の公園
顔の無い人が二人
ベンチに腰掛け
ただずんでいる

僕はというと
犬の散歩に来ていて
遠目にその様子を見ている

二人はびくともせずに
手を重ね合わせ
顔を伏せ
小声で何か話している
何かがあったのだろう事は一目瞭然

そっとしておいてあげようと
思うのも束の間
犬が二人の方へ行く
それでも、まだ距離があるから
大丈夫だろうと
安心していたのが間違い
犬は
ズンズン
ズンズン
そっちへ

駄目だよ!!
空気読めよ!!
とか思いながらも、
犬はわかりはしない
ズンズン
ズンズン
そっちへ行って、
目の前で立ち止まる
立ち止まり、
そこの芝生を
クンクン
クンクン

二人はもちろん気付いて、
こちらを伺っている
僕はとてもじゃないけど、
そちらに目を向けられない

ほら、あっちへ行くよと
首輪に繋がれた紐を引っ張るが
動こうとしない
いや、動かないのであれば
そっちの方がまだ良かった

次の瞬間、
犬はゴロンと寝転がり、
腹を見せ、
地面に背中を擦り付けたのだ!!

もちろん、
二人は驚いている!!
驚いている気配がある!!
犬は背中を擦り付けながら、
尻を振る!!

僕はテンパる
テンパった末に、
あろうことか、
犬の名前を呼んでしまった!!
いや、呼ぶのは別に問題ない
その呼び方に問題があったのだ!!

「立つんだ!!
立つんだ、ジョ〜〜〜〜〜〜〜ォ!!」

吹き出す二人!!
ビックリする犬!!
事態に気付く僕!!
走り出す犬!!
紐を放してしまった僕!!
笑う二人!!
凄い勢いでかける犬!!
追いかける僕!!
まだ笑っている二人!!

そして、
走るに連れ、
笑い声はだんだん遠ざかり、
犬を捕まえた時には、
もうそこは公園の外で、
二人の姿はもう見えない

あぁ、何と言う事か
僕は頭を抱える
犬は舌を出して
ハァハァ
ハァハァ

とりあえず、
二人の状況が
少しでも好転してくれるのなら
それに越した事はないのだけど






自由詩 顔の無い人たちの憂鬱 Copyright opus 2014-06-10 13:59:08
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