駅舎にて
アンドリュウ

町の外れの寂れた駅舎で
ベンチに座って
夕陽を眺めていた

母になれなかった女と
子犬を産めない犬と
それと女の連れの老人と

老人は抜き身の小柄を手にしていた
けれど今は病んで衰弱していた
女は常に老人を気遣っていた

年老いた犬は寝てばかりいた
生まれてから誰一人噛んだ事がなかった

駅の前の線路にはレールがなかった
枕木もところどころ盗まれていた

三人と一匹は
来る筈のない電車を待っていた

西の空を茜色に染めて
日が暮れるには
まだ間がある

柔らかな風の中を
鳥たちが森へ帰るのが見えた


自由詩 駅舎にて Copyright アンドリュウ 2014-06-08 21:09:34
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