ビー玉沿線
望月 ゆき
ところであなたは
どちらにお住まいですか
と
たずねると
その人は、
ビー玉沿線ですよ。
とだけ言って
ころころ笑った
笑いながら
ころころすれ違って
ふり返ったときには
もう
うしろ姿は点で
その人の帰ってゆく先には
いつもいつも
きらきらとまばゆい光があつまっている
のが、遠くに見える
わたしは、といえば
ゆるやかに流れる
ベルトコンベアの上に乗っていて
とまるかとまらないかの速度で
ただただ
前へ前へと運ばれてしまうので
二回目にふり返ったときは
その人はもう
消えていて
追いかけることを
いつもあきらめてしまう
遠くて届かないきらきらは
どうしていつも
魅力的なのだろう
ビー玉沿線を
列車がゆく
どれもみな
うしろへ、うしろへ、
流れ
あの光のあつまる、きらきらへと
はしってゆく
ときどき窓から
思い出のようなものが
身をのりだして
わたしに
大きく手をふる