【 慈雨 】
泡沫恋歌

「梅雨は嫌い」と言ったら
おまえはそうでも
俺たちは雨が降らないと困るんだ
紫陽花の葉っぱに隠れていた
一匹のカタツムリに
小さな声で抗議された

「洗濯物が乾かない」と嘆く
なにを言ってる
雨が降らないと俺たちは
干からびて死んでしまうんだぞ
ムッとした声で
土の中のミミズが応えた

「ごめんなさい」 
わたしって人間は
いつも自分の都合ばかり
嫌なことも 辛いことも
視点を変えてみれば
それは誰かの役に立っていることなのだ

この降り続く雨が
大地を潤し 草木を茂らせて
小さな生き物たちを育み
そして地球の生態系を回している
雨粒の一滴 一滴が
命の水となって土の中に滲みこんでいくから
これは豊穣の雨 慈雨なんだと
今 分かったよ



                               2014/06/07
       


自由詩 【 慈雨 】 Copyright 泡沫恋歌 2014-06-07 11:34:13
notebook Home 戻る