菌類の先端
遙洋


わたしにも速度がある
誰にでもあるというからには
あるに違いない


とても遅い


祖母たちの
三度目の転生にすら
追い抜かれる


巨樹のさかえた森の
最後のらく葉の日にすらも
間に合わない


かぎりなく静止に近いとも言える
わずかに動的であるとも
だがたしかに
わたしにもある


そうに違いない
手を伸ばすしぐさの終点
遠い未来にその先端が
いちどきに歓声をあげながら
増殖する夢を
毎夜みている




自由詩 菌類の先端 Copyright 遙洋 2014-06-07 11:25:56
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