ある朝
山部 佳

トラックの運転手や作業服の男たちで賑う
国道沿いのコンビニの朝

駐車場の隅の喫煙コーナーに
隠れるように佇んでいる
くすんだ鶯色のトレーナーに古びたGパン
真新しさが不釣合いなスニーカー
その男は、何かに怯えたような眼をして
紙パックの鬼殺しをストローで飲みながら
通り過ぎる自転車の女子高生や
国道へ出ていくトラックやワゴンを見送っていた

私は運転席で上着を作業衣に着替え
トラックの運転手や作業員や高校生の側につく
当たり前の生活者の仲間に

男はこれから
ハローワークに行くかもしれない
ごみ集積所へアルミ缶を集めに行くかもしれない
あるいは
橋の上から川に飛び込むのかもしれない
私は、窓も開けていない車内で
蒸し暑さも忘れて、見入っている

それは、憐れみか…
私の憐れみは、優越感の裏返しなのだ
状況が変われば、不安感に変化する
哀れな優越感 取るに足りない

男は空になった酒の紙パックを
ごみ箱に入れて歩き出す
新しいスニーカーのお蔭で、足取りは軽い
女子高生のミニスカートから伸びる脚が眩しい
私も
缶ビールでも買ってみようか



自由詩 ある朝 Copyright 山部 佳 2014-06-06 21:00:02
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