流れ星の夜
藤原絵理子


枯れ井戸の底に蹲って
見上げている 星空
赤い色の流れ星が 切り裂く

家路を急ぐ 羊飼いの少年
今朝通った道は,塞がれている
黒々とした金属光沢の壁
青ざめた月の光ほど孤独

幻想は未来を予見しない
少年は 彼の世界の果てにいた

無垢な羊たちは 一塊に凝縮して
ひとつの結晶になる
真っ赤なルビーから 一条の光
内臓を貫いて 岩山を融かす

サンミシェルの古書店に
置き忘れてきた 杖の先は
牛の革で作ってあったというのに
アンドロメダに吸い込まれた

獰猛な一角獣を飼い慣らした
青い瞳の乙女は去り
五つの黄色い星が
血の海に浮かんでいる


自由詩 流れ星の夜 Copyright 藤原絵理子 2014-06-04 22:38:18
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