雪
砦希
かえりみちに口ずさむうたうたは
誰かに聴かれることもなく
よるの闇に葬られる
小指ですこし触れただけで
粉ごなににくだけてしまいそうな闇にさえ
取りに戻れない
臆病さばかりが
増長している
闇にうたが積もり
雪のように積もり
まだ溶けず
そこにある
ひろわれるのを
待っている
わたしは知っている
だれもひろいには来ないことを
だれもこの場所を知らない
来ようとしても
途中でかならず道に迷う
そういうふうに
できている
それはわたしの殻であり
あなたの殻でもある
そうした隔たりの中
私のうたは
生まれては消え
生まれては消え
闇に積もり
溶けることもなく
ひっそりと