愛されない
葉leaf




人々の敵意が鉄の壁のように僕を取り囲み
外側から来るどんな愛も遮断し
内側から発されるどんな愛も跳ね返してしまった長い期間
僕の中には一枚のカードが次第に凝結していった
最後の切り札として
自分の存在を複雑に証明するようなカード
それが「自分は愛されない」というカードだった
自分は愛されないからこそ社会を憎むことができるし復讐することができる
自分は愛されないからやむことのない渇きに襲われている
自分が何者であるか遡っていくと自分は愛されない存在だということに行きつく
自分は愛されない孤独で孤高の存在である
この最後の切り札は単なるコンプレックスなのか
もともと愛を拒絶する絶対領域としての孤独がこんな形で現れたにすぎないのか
愛を求めて
しかし求める愛は理念的過ぎて具体的な愛では決して満たされなくて
その満たされなさに苦しみながらもひそかに満足していた
愛は予め僕を巻き込んでいたはがせない皮膚のようなもの
その皮膚を脱ぎさり涼しい風を浴び
誰にも遮られない遠いまなざしを送るために
「自分は愛されない」とカードを示すことで僕は愛に勝利していた
そんな複雑な存在証明の託されたカード
生きることが稀に僕の存在を掘削する
理念でも思想でも感情でもなく存在という肉を削ろうとする
そのとき僕は迷うことなく「自分は愛されない」というカードを示すだろう
いくら人の愛に浸されていても
僕の存在には誰も触れることができない
僕の存在
渇望と憎しみと孤独の源泉にある湿った柔らかい内部
僕の存在を証すと同時に守護する最後のカード
それが「自分は愛されない」というカードだ


自由詩 愛されない Copyright 葉leaf 2014-06-01 05:03:24
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