アドバルーン(8/24用)
モリマサ公



(モリマサ)
「目的地まであと5分です」
音声で表示されていく地図たちが広がって
空気が少し残った歪んだアドバルーンを
片隅にのせたまま
駐車場はかたむいている
誰の住んでいるどの町にもあるファミレスの
メニューみたく近くて
遠いのにどこまでもつるっとつながってて
のぞいてる全員の感覚がいまここに
今ここに何もかも超全部つながってる

(まみちゃん)
(高校生 兄)
わーい
グーで殴りつける
グーのままで殴りつづける
まっさらできずひとつついていない!
完璧な空気!
排気ガスを吸い込んで持ち上がるコンビニ袋!
回転してる!
記号みたいだ!
その上を真っ白い乗用車が
一台
二台

(古泉先生)
(中学生 弟)
「『いのり』
というものは
伝わり方によって
個体から液体、そして気体へと変化したりしない」
『存在する』
ということについて
今はもう
考えたりしなくていいんだよ」

(猫道)
(フリーター25歳女 出身茨城)
「じゃあ親の気持ちになって考えてみろよ」っていう
ガキっぽい目線
からうまれる成長しきれないパパたちの巨額の負債
と責任の所在
トラックが通過するたびに揺れてる
たくさんのアパートとマンション
「白熱球をみてると何かの割れる音がします」
ぱりん

(全員)
(コーラス)
「そっかーこのことだったんだー」
腕をのばしてばらばらに
がけのふちから
飛び立っていく
「わーい」

(ハナエタス)
(妹 小学校4年生)
あはは
四つ木のジャンクションでわたしたちは交差していく
俯瞰する
「時速と停止しているものの関係」
「その浮力と非リアルさ」

スピードに乗ってどんどん近づいてくる
「首都高の看板のみどりいろ」
あれはわたしたちの家族?
「それってもしかしてハッピーエンドですか?
(なにここ?これは・・・未来?

(古泉先生)
(新宿アルタ前 再び弟)
衝撃!の文字
とともに
宇宙人が次々と人質をとりはじめる
ブラウン管の中を浮かんでいく体たちがUFOに吸い込まれて
「何だろうこの失われていく感覚」
(なんだろう)
5分感覚で手を洗いながら
お兄ちゃんがぶつぶつなにかいってる
お父さんはお母さんの目をボールペンで刺そうとしてる
家は三軒先まで燃えてしまった

(猫道)
「信じられません!決定的な人類としてのじじ時間というがが概念が
今本当の意味であっあっー」
「ギャー」

(ハナエタス)
(中野駅に向かう東西線前から二両目1つ目のドア 再び妹)
重力
これって操作できないしー
ボディー
これも100年ももたないよねー
地球人て宇宙の速度でいうとすぐ死ぬし
酸素がないと生きてけないってホントー?
あは
 あはは

(モリマサ)
(ナレーション)
ユーラシア大陸の右のはじっこで
ほそながい島たちがくっついて並んでいる
すこしずつ遠ざかる太陽のひかりの角度をうけて
すぐに東京都のマークのついた
下町の浄水場のたてものがなつかしく黄ばみはじめる
愛ってのは本当にいい
いろんな形があって
顕微鏡で細胞見るのと
宇宙ステーションの窓から砂漠みるのとが似てるみたく
大きさを変えて
質量を超えて
分解されながら違う形になって
また新しくつづいてく

(猫道)
キイ
キイ
うまれてこなければよかったかも
とかぼやく
ブランコのうえの
「情報源としてのぼくたちあたしたち」のいきいき活動しつづけるデータ
つかいすて衛星のGPSの点として
おれたちは生活しつづける
なんだろうこのつま先の浮遊間
(なんだろう)

(まみちゃん)
でもあたしの本当のお父さんも今のお父さんも
ぼくの本当のお母さんも今のお母さんも
本当はやさしいひとなんです

(モリマサ)
じゃあこのテストで100点とったらパパが帰ってくるって本当?
じゃああのはっぱが落っこちたらママは帰ってこないって本当?
じゃあこうしたいっていったら
もうそうなることって
本当はもうないんですか?
なんだろうこのつま先の浮遊間
(なんだろう)

(コーラス)
むきだしの心臓をきゅうにわしづかむ名前みたいに
なんだろうこの失われていく感覚
(なんだろう)



 


自由詩 アドバルーン(8/24用) Copyright モリマサ公 2014-05-22 06:40:23
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