差し出された皿
そらの珊瑚

さあ、どうぞと皿が私に差し出される
その上にきれいに盛られている
とてもいい匂いのする料理は
食べやすいように切り分けられている
中には苦いものもあるけれど
健康でいたいでしょう?
それを飲み込めば健康でいられるのよ
何事にも多少の犠牲は仕方ないからと
私が口に入れるのを
ほくそえみながら
待っている

生きるためには
食べなければならない
狩りもせず
自ら栽培せず
差し出されたその皿に載っているもの
それはとても魅力的であると同時に
正体を暴けば実に不可解なもの
肉の形をした何か
野菜の色をした何か
まがいものと見抜けないように
操作している何か
さりとて
その何かを知るために
私は思考しただろうか
わかったことはひとつ
母さんは本当に料理が巧い

手にとったスプーンに
ツクリエガオの人がほほえんでいる
それはさかさまで
私のほんとうの母さんかと
少し疑う
けれどただの気の迷いの類だったのだろう

私は与えられていた
私は甘やかされていた
蚕の蛹を食べたことはなく
芋のつるも食べたことはなく
飢えたことなどいちどもなかった
私は幸せを与えられていた
この平和な国で
差し出された皿に
隠された真実を知る努力もせずに

さあ、どうぞと皿が私に差し出される
平和でいたいでしょう
何事にも多少の犠牲は仕方ないものよ


自由詩 差し出された皿 Copyright そらの珊瑚 2014-05-20 08:20:52
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