意識
有邑空玖
灰色の冬の木々に
降り積もる真白い雪
夏の間緑に生い茂っていたなんて
想像も出来ないくらいに
冬の木々には色がない
夏に冬の寒さのことは考えない
しかしそれは根底で
あたしを脅かす
まるで死のように
確かに冬は一種の死で
夏は死にゆく季節だ
考えないようにしよう何もかも
そうして過ぎ去るのを待つ
いつだって
点滅する信号を見上げている
あれは中学生のあたし
痩せた手首にくるくると繃帯を巻いて
これはお守り、忘れないための
と
ねえ、そんなことをしなくても
あなたは忘れたりしないよ
そう、今でもね
紺色の制服の裾を翻してさあお帰り
冬に囚われないように
根底であたしを脅かす灰色の季節
かさかさの唇は君の名を紡ぐ
音もなく
降り積もる真白い雪
世界はまだ終わらないから
考えないようにしよう