ひとつ かたわら Ⅲ
木立 悟
ふたたびが
ふたたびをくりかえし
起こる風が
花を揺らす
ふと 指が
虫の羽の陰をすぎる
そのあいだは
切り落とされたように感覚が無い
季節を剥がし
捨てる力が
曇に落ちて
巨大な虹の紋をつくる
むらさきが緑を透る径
帰らない指のために
ひらかれていた窓もやがて閉じられ
たくさんの灯のなかのひとつになる
金属の轍が
暗がりに浮かび
行方を横切るものの背を
傷に渦に染めてゆく
雨のあとの光が
径の上に径を描き
そのままの夜を映している
曇を放す曇 地に消える曇
むらさきのなかの緑の目
片方を残し 昇るまばたき
ひとつの羽 ひとつの曇
動くことなく見つめている
夜は触れては去るものに満ち
生きものの光も 草の火も
途切れ途切れの涙を流し
そのはざまへと はざまへと
ふたたびはふたたび降りおりる