都会
ヒヤシンス

都心の驟雨にアスファルトが匂い立つ。
ここの緑に匂いは無い。
私は長年連れ添った悪習と手を切ろうとするのだが、
そんな心意気も地を這う無数の影に踏みにじられてしまう。

 
人を旅へと誘う欲求は心の過ちから起こることがある。
都会の雑踏の中で己の過ちを背負いきれなくなった者の吐息が病んでいる。
藍色の逃避行によって人は心の安楽を望む。
夜も更ければ無数の影は闇に溶け、堅固な呪縛から逃れた気にもなるというもの。

ああ、これがいけない。
裏通りの吐瀉物は未来の誰かの夢かもしれないのだ。
誰もが避けて通るその道の真ん中を私は歩こう。

藍色の空間に放り出された私は思う。
旅情を抑え、過ちを咀嚼することから始めようか。
匂いの薄れたアスファルトを踏みしめて、都会のネオンを一人歩く。


自由詩 都会 Copyright ヒヤシンス 2014-05-14 22:00:36
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