風にそよぐ掟
イナエ
1
動物園の規則正しい給餌や
健康で安全なゲージに
拘束されることを嫌って
自然界へ飛び出す鳥がいる
自然界で生命維持するには
喰われることのすくないけものでも
ストレスがあるのだろうか
動物園に入り込むさるもいる
2
行儀良く空を仰いでいる山の木々
穏やかな息吹で巷の暮らし疲れた私を
癒してくれるけれど
山肌に潜り込んだ根は
互いに絡み合って風に耐え
それでいて
餌を奪い合い 水を奪いあい
高くのびて枝を広げてて光を奪い
未熟な草木を枯らすという
3
夕暮れに向かって
急いでいた一日に追いつかれ
都会の空を銀色の鳥が大気を切り裂くとき
体温を失なったナイフを研ぎながら
人を殺せと
言った教師の教えは
正しかったというのか
幻想におぼれる感性は
張り巡らした糸に触れる者を
破壊し切り裂さいて
炎に焼かれた理性の痛みも
何時しか麻痺していく