ひとつ 滲夜
木立 悟





くちびるに触れる鈴の粉
遠雷 器
雫と滴が
すれちがう径


ひとつのなかの無は増して
響きはさらに高くなる
窓の鉛 壁の銀
水の淵を照らす粉


分かれる前の大陸から
つづきつづける影があり
岩の陰の金色をすぎ
空の亀裂を指さしている


森を囲む森を囲み
雨は坂道をおりてゆく
ひとりまたひとりと集まり
何処かへ向かう子らを濡らす


蒼く白く
空は割れたままでいる
地に接する傾きを
数え切れない羽が昇る


火と火のはざまにある花が
じっと緑を鎮めている
汗と涙を持ち去るように
羽はそばをすぎてゆく


坂道をのぼる子ら
川のはじまりへ
花のみなもとへ
何かに急かされるように
歩いてゆく





















自由詩 ひとつ 滲夜 Copyright 木立 悟 2014-05-01 10:36:25
notebook Home