自己中
イナエ



おそらくどの国民でも
国の敵が現れたとき
一つにまとまろうとするであろう

為政者はそれを利用して
敵を作り国家存亡の危機をあおり
同じ方向を向けさせた歴史もある

そのとき 
真っ先に駆け出すのは若い男
国を守るのは俺たちだと

己の中を去来する恐れは弱者だと
自らの目に睨まれ疾駆する
とらえた敵がたとえ虚像だと疑っても
疑いは心の揺れと己に信じ込ませて
疾走はとまることをしない

一色になった応援席を見よ
青い旗の中で 赤い旗を振れるか
燃え上がる青い火を乱す者となり得るか



日本では何度繰り返したことか

歴史を見れば
そっぽを向いた男がいた
諸大名が九州に集まるとき
関東に居残って
若者が国難という語に奮い立つとき
肉親愛を貫いた幾人かの詩人

民族よりも人間であることを
選んだ人の勇気と思慮
燃え上がってしまう若者よ
心中に一本の心棒を通した
真の自己中になれるか


自由詩 自己中 Copyright イナエ 2014-04-24 22:40:13
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