わけがわからない程
ハァモニィベル

黒いサングラスをかけたカンガルーが、ライフルで狙ってる
その陶器製の、白くなめらかな母韻は、
ゴムのような口唇から何度も、何度も、
繰り返し発射されるから
執拗な子守唄に、もう寝付けない夜の―串刺―。

金属の耳についた鍵穴を施錠しても、
うたは・・・、なお、ポタポタと
耳に滴たり、
聞くほどに、聴くほどに、
 尼僧が来るような気がして、
   尼僧が来るような気がして、
寝付けなくなって、

夜の朦朧とした球形の世界を、眼球が駆けまわり
明け方が毛細血管を覗きに来るまでは、ただただ、
のっぺりと進捗する時間の絨毯の上で
手も脚もバンザイする仰向けのザムザ一匹。

庭では、颯爽と通過した風に、
拍手喝采する木樹の葉たち。
便器が咽せた大量の、罪と罰は、八分の遅刻。
急げ、いそげ。

わけがわからない程、通勤と通学の混じる路に、
現場に疾走る朝のダンプのゆく道に、
ただ、ヒッソリと、
〈世界を定義する〉権利が、
落ちている。
道端の、
コンピニのビニール袋の影に、
ぽつん、と。多分。





自由詩 わけがわからない程 Copyright ハァモニィベル 2014-04-24 06:57:46
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