ひとつ 蒼へ
木立 悟






地の上に
小さな月が幾つも転がり
海への径を照らしている


黒い瞳の
ななめうしろ
銀の髪に
ゆらぐうなじ


海を越えては
また戻る
とどまらぬ羽
とどまらぬ笑み


水たまりの内の
双つの空
うたうたびに
増える足跡


剣で描いた街の絵に
人は居らず にぎやかで明るい
標の無い
音だけの径


花は流れ 
海に至る
風にちぎれる風のかたち
うすいうすい 蒼の飛跡


四方から指が
降るように触れ 離れる
応えるもののない
まばたきの色


はざまは動かず 影は無く
場所だけが震え在りつづく
墓の街の永い春を
口笛はひとり飾りゆく

























自由詩 ひとつ 蒼へ Copyright 木立 悟 2014-04-22 11:39:26
notebook Home 戻る  過去 未来