夏忘れ
比良末潮里



たくさんの色で塗りつぶして真っ黒にした気持ちは
クレヨンだったが為に
雨を弾いた。

もう
会えないという事実が
悔しくて哀しい

忘れてしまうことは
忘れられるより怖くて
ため息が出た

女の子は知らない
列車の中で
不安気に浮いた脚でブラブラ揺れる

青白い顔の少年は
静かに向かい側で
微笑む

床は灰色でつるりとしていた

もう
顔が浮かばないんだ
あんなに
好きだったのに

どうしてだろう

強くなることと
自由になることを
求めた

あんなに

弱いまま
ずっといれば良かった

曼珠沙華
が綺麗なことが
憂うつになった

歳月の移ろいの
残酷さ

逃げたくても
追いかける

向日葵が顔をあげるのが
私には
不条理に見えた


自由詩 夏忘れ Copyright 比良末潮里 2014-04-21 00:41:19
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