コウフクノモノサシ
ただのみきや

今夜ぬかるみそうですね
まだちょっと震えていて
瞳は亀裂して手招くのです
梢に掛ったビニール袋の
違和としての惨めさの中へ
眠りは逃げた僕から逆行した

福寿草のように笑う
気の早い毒でした
渡り鳥だったのか
渡りを夢見ただけだったのか
飴で舌を切るような
潤う痛みの繁殖地で
羽がどんどん抜け落ちて
ついには自分で引き裂いて
ああ紅梅白梅一面の 

あなた眠れますか?
月はコップに浸りながら
春画のような二人がハタハタと
破れ晴れるの夢が再々
狐狸狐狸と忘れましょう
救命しているのよ自分を
愛の骨片や優しさのヤジリがギザギザ
腑抜けずに化膿して
ホトトギスほどの塊が
暗い軒下に落ちました
痞えたみたい 喉に 冷たく

沸々とあちらこちらから
背中をなぞる泡の囁きに
計れない量れない図れない
魔物デスノヨ幸福ハ
解されない一塊の肉の方程式 
生活の生恥部切開針千本嫌々ヤメテ!
いのちの逆回転に吸いこまれながら
世間様の横顔 抜き足で駆け足
椅子のない椅子取りゲームから
赤ん坊だけは方舟に乗せろ

サボテンのように微笑む真っ赤な嘘だねきみは
忙しなく吠え立てる人や犬や
こんな埃っぽいグルグルに
カマキリの敬虔な静謐 やがて
真白く破れる一瞬に
幸福しませう!
ひと垂らしの眩暈を燻らしながら
首から齧って頭の中へ


      《コウフクノモノサシ:2014年3月29日》






自由詩 コウフクノモノサシ Copyright ただのみきや 2014-04-16 23:02:19
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