処女航海
うみこ

何もない真っ白な夢が舟を作る
霧が行く手を塞ぐ

遠くに歌声?
叫び?
笛の音にも聞こえる。
朝靄に船を出す

雨はしたたかに心を濡らす
メチャクチャなピアノ

不安定に舟は揺れる
言葉の意味がわからない
息切れにも似た歌
カモメ
カモメはどこ

千切れた音
最初から繰り返すリズム

遠くに歌声
叫び
笛の音にも聞こえる

突然

オルゴールの音
でも誰も思い出に住んでいない

ここは森の中を行く一本の川だと気づく

海はない
カモメはいない
空は細い
でもなぜだが
水面を優しく撫でている

涙もなく進んだ
朝靄に纏われて
いつまでも昼はこない
何かが変わる
そんな気がする
だけどそれが怖い

私の髪が長いことに気付く
水面が深緑だと気付く

森の木々が
そこへ影を落とすと
暗いのだと気づく

あの音は繰り返さない
ようやく私にも聞こえた
優しい歌声

海が見える
もやが晴れる
カモメ
カモメ
あれがカモメ

白い砂浜がある

でもまだ先がある

どこまでも聞こえる

振り向けばあの日のリズム

雨が降るかも
でもわかるわ

それはとても静かなの
たぶん

正解はもっと先

新しい音
何かもわからない
知らない感覚
ひどく眠たい
つまらない感じ
よく聞こえない感じ
よくわからない感じ
イライラする感じ
知らない感じ
不満な感じ
足りない感じ
落ち着かない感じ
始めて立ち上がる
それで船はガタガタ揺れる
私がバランスをとる
ラグビーボールみたいな感じ
だんだんそれが楽しくなる

近くで聞こえるリズム
楽しげに聞こえるあのリズム
なんだそういうことか
少女のようだ
まるで幼いゆめを見せるような
そんな可愛らしい音がきこえる
船のしたはコバルトブルー
水底の砂に日の光が素敵
まるで私空飛ぶ船にいるみたい
透き通る水
なんて綺麗な日々だろう
たのしげに覗き込む
鱗に色をつけている魚
右に左に
忙しそうに動く
それを見て笑ってしまった
だってだって可笑しくて

風がきこえる
これは笛のおと
綺麗な音
私をすかして
空に消えたわ

真昼の星は
遠く白く
群れをなす海鳥
煌めく海に一人と一艘
両手を広げたとき

流れ落ちるようにして
街のざわめき
ここで航海は終わり
手をひいてくれる人がいるはずよ
私は今夢見るヒロイン
きっと見つけるの
信じてる

沢山の果物
お酒
お店
輝く光

激しく燃える炎
それに照らされた濡れ石のような道
情熱的な音楽
艶やかな衣装
素敵な口紅
真っ赤な靴
見違えるようでしょう
いつまでも黒い髪
誰もが振り向く後ろ姿
歩き方を知り
ますます風は強く
揺れる輪っかのイヤリング
一番楽しいと感じた瞬間

闇夜
そして窓枠から見た月はとても輝いていた






自由詩 処女航海 Copyright うみこ 2014-04-09 05:55:48
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