ミルク色の病院ダンス
ざらざらざら子
開け放った窓からカーテンがあふれだしたからオルガンを弾いてともだちと身体を絡ませておどる/まだ子供なのになつかしくなるような錯覚/点滴があと少しでおわるから看護師さんを呼んで/丸い体の看護師さんがいい/ね、おねがい/いつか剥奪されたわたしたちのいちばん憂鬱なぶぶんがほじくり返されるような午後に/腕と腕そして脚と脚それから舌を絡ませておどるわたしたちは泣いてる/どうしてもきれいな光のゆらめきが/生まれたことを祝福するので顔をゆがめた/それはどうってことない不正だったんでしょう先生/わたしたちは次の言い訳をかんがえるから/考えながらおどってるから/メスをいれて/どうぞ/おかまいなく
ずらりとならんだベッドのむこう、わたしたちの終わりが広がってる
それは断片といわれれば断片、むぞうさに置かれた花束たち
大きなほうから順々に消えていくのが理想だと、先生に言ったはずなんだけど
ここからここまでの傾き/一身に浴びるはずだった昼のまどろみ/とどめの演奏で眩暈をおこしたともだちにキスしたら止まらなくて/ピンク色の痣になる/応急手当はすんだから/演奏をつづけて/ともだちとわたしとどちらが先に生まれてどちらがさきに眠るか/どれだけ熱量のある嘘をついたか/これくらいがわたしたちの/最初から匂いたつような夢だったみたい/おやすみそれからさよなら/いつも原因をしらべられてしまうわたしたちだから/もう名前いがいに言うことはなくて/ひび割れるような/がらんどうの音がする
今日みたいな午後/いっせいに消えたわたしたちの入り口は
コンクリートでふさいで/メスがはいらないように/すべてかき消して/