つくしの佃煮
末下りょう

小さいころ、春になると
ばあちゃんと手をつないで
つくしを摘みにいった
いつも風が強くて
河川敷にはいっぱい
つくしが伸びていた
シャツにてんとう虫をつけて
ビニール袋につくしとタンポポを
たくさんいれた
つくしのつなぎめを
抜いたり差したりして遊んだ
ばあちゃんの手はかたくて
日に焼けていた
ぼくが土手で転ぶと
ばあちゃんはすぐきて
ぼくをひっぱり起こした
一緒に持って帰ったつくしで
ばあちゃんはつくしの佃煮や
つくしご飯を作った
佃煮なんて好きじゃなかったけど
ばあちゃんと探してとったつくしの佃煮は
すごく美味しかった
ばあちゃんは三年前から
グループホームで暮らしている
ぼくのことはおぼえていない
耳も遠くなった
このまえ会いにいったときは
わたしのお金盗んだでしょと
ばあちゃんに言われて
いくら盗んだのか聞いたら
二千円と言うから
それを返した
ばあちゃんの手はかたくて
いまも日に焼けている
風の強い河川敷で
ばあちゃんが
夕陽がきれいだよって言ったのを
おぼえている
でもぼくは
夢中になって新しいつくしを
みつけていた
春だった



自由詩 つくしの佃煮 Copyright 末下りょう 2014-03-25 19:49:33
notebook Home 戻る