冷雨
葉leaf




求めていた職に就き、初めて出勤する朝、季節外れの冷たい雨が降っていた。雨は気が狂ったようにでたらめに地面を打ち付けているようにも思えたし、そのリズムに一定の規則があるかのように思えた。雨によって空気が冬の日のように冷え、その揺らぎが私の頬を無骨に凍らせた。私はしばらく、揺らぎ続ける冷たさに全身の感覚を与えていると、この冷たさはいつかも味わったことがあると気づいた。

もう4年前だろうか、クリスマス近くに、ある女性と会っていた。彼女と喫茶店で話した後、ともにイルミネーションの点灯の瞬間を見たのだった。私がひそかに思いを寄せていた女性だったが、相手はとっくに私の好意など見抜いていた。立ち並ぶ大きな並木に一斉に光が点じられたとき、そこには紛れもなくファンタジーがあった。その瞬間、確かに世界は変わったのだ。私は歓声を上げたが、彼女は大して興味を示さず、その後すぐに互いの帰路に着いた。あのときの冬の冷たさと、今日の冷たさは似ている。

当時、私はすべてに飢えていたが、すべて満たされなかった。当時、私の一番好きな季節は冬だった。冬は、冬自身が冷たいことでもって、絶望も孤独も憎しみも傷も、あらゆる否定的なものを赦してくれる優しい季節だった。私の満たされない気持ちも何もかも包摂するのが冬だった。だが、彼女の私に対する無関心を感じたあの日、私はその冷たさを否定しようとした。その冷たさに気付かないふりをした。私は自らを包み込んでくれている冬を否定し偽装しなければならなかった。

今日、私は大きく満たされていた。私は冷たさを否定する必要も偽装する必要もない。かといって冷たさに優しく包摂される必要もない。私自身、温かさを他のものたちに与える一つの春だった。私はどの季節が好きなのでもない。端的に私は一つの春だった。そして、降り注ぐ冷雨をしっかりと見つめながら、私の中には、その落下と冷却をひとつずつ赦していき、そこから人々と季節の始まりを助けていく大きな一つの楽章が鳴り響いていた。


自由詩 冷雨 Copyright 葉leaf 2014-03-20 17:24:12
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