遠く暗い街
壮佑

 1

目を瞑って
灰の砂漠を
食べていると 
こころは徐々に
ひからびて 
ちっぽけな
雲塊になって 
コトコト笑う
鳥の頭蓋に
埋め込まれる 

鳥のくさめ
いや、くしゃみで
ポスンと
吐き出されたこころは
夜露を吸って
ジュワッと膨らんで
星雲になって
スピンを始めるけれど
暗黒エネルギーの
不足により
失速しちゃって
淋しい鉱石が
身を寄せ合う 
晶洞都市に
きり揉みしながら
墜ちてゆく

なし崩し的に
錆びてゆく時間が
散らばった
こころと
散らばった
星々と
砕かれた水晶の
破片のうえに
銀の煤を降らせ
すべてのモノは
銀色の樹木になってゆく

たちまち
生い茂った
樹木の枝の向こうに
透けて見える
夜空と
遠く暗い街

たくさんの
人々の影が
幽霊のように
さまよっては
夏至の宵の
蛍のような
僅かばかりの
こころの糧を
分け合っている

みんなは
何処から
逃げて来たのだろう
みんなは
どうしてあんなに
踵を返し続けるのだろう


 2

禿げ頭のてっぺんに
冠羽が三・四本
ピンと
立ちやがった鳥が
きょときょと
あたりを見回して
液晶の夜が
捩じれてゆく
遠く暗い街

夜の向こう側では
水の中で
死んで行った者たちが
幸せそうな顔をして
笑っている

街のこちら側では
水鏡のある広場で
子供達が
輪になって遊んでいる
それは
永遠に繰り返される

夜の捩じれは
巨大な渦になり
回転を速めて
そのうちみんなは
流れ去る闇に
逆撫でされた
顔のままで
世界旅行に出かける

遠く暗い街

夜の
液晶の
この
文字列の
この
これ

これ

視ている
わた

しし

ししし
かし
かしいい
いいっ
いっ
いった
いそっそ
そそれがな
なななな何だっ
いててっ、
いいっ
い言うんだ






自由詩 遠く暗い街 Copyright 壮佑 2014-03-07 20:22:15
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