私の「文学」との出会い
yamadahifumi
・・・聞いてください、私
言いたい事がないんです
最近では皆がもう
真剣に何か大切そうな事
国の事、経済の事、災害の事、
その他沢山の事について
真面目そうに語ります
でも、私には語りたい事がない・・・
例えば、親友のヨシコちゃんは
新しくできた彼氏がいかに素敵か
私に沢山教えてくれます
でも、私には語る事がない・・・
私には彼氏なんてわからないし
それに本当の事を言うと
「友達」の存在もわからないのです
何が大事で、何がそうじゃないのか
私には皆目見当がつかないのです・・・
それが、ほんとに本当です
だから、ある日、先生に
ふと聞いてしまった事があるんです
「でも、先生、私達
こんなしなびた生活の果てに何があるんでしょう?」って
年金を払って、お嫁さんになって
生涯安定した暮らしを送るその時の
切なさ、寂しさについて
・・・私は聞かれずとも分かるような、そんな
そんな気がするんです・・・
そしたら、先生はとてもお怒りなさって
「お前がそんな口答えをするとは思わなかった!」・・・ですって
私、口答えしたつもりはなかったし
まじめに聞いてみただけなんですけど・・・
その後、休み時間にヨシコちゃんとか他の友だちから
「あんた、思い切った事言うねえ」とか「やるじゃん」とか
「言い過ぎ」だとか、色々言われました・・・
でも、私が疑問に思ったのは私の素直な気持ちで
別に反抗したい気持ちがあったわけじゃないんです
・・・でも、そんな事、言っても伝わらないので
私はぐっとだまりました
そして、その帰り道、私は本屋によって
太宰治全集の十巻とカフカの短篇集を買って帰りました
・・・私はそれまで、まともに本なんか読んだ事はなかったのですが
何故か、その日はうんと難しい本を・・・そう、
何か哲学的な書物を読みたい気持ちになっていたのです
・・・こんな気持ち、他の友だちにも、例え、未来に彼氏ができたとしてもその彼氏にも
きっとわからないであろうこの気持ち
・・・その気持ちを理解してくれるのは誰か
私はそんな人を探すために
そっと書物の扉を開けました
・・・それが私の読書体験
つまり、それが私の
「文学」との出会いでした