1号車の思いなし
ichirou

1号車に乗っているあなたを
僕は追いかけることができなかった
すぐにホームは終わって
ホームの端っこで呆然と見送るしかなかった

もしあなたが16号車に乗っていたら
息が切れて走れなくなるまで
追いかけることができただろうに

1号車に乗ったあなたは見えなくなって
僕にとって必要のない何百人もの他人の無関心だけが
僕の目の前にまき散らされた



ホームの端の柵を握りしめ
線路の行く先を見つめる男がいた
最後尾の加速する車窓から見た男の顔の残像が
カーブの先に見えた先頭車両に映っていた

男はきっと泣いていただろうが
残像の中で男の涙は雨に変わっていた







自由詩 1号車の思いなし Copyright ichirou 2014-03-04 21:01:58
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