通りすがりの
深水遊脚

この言葉が何より先にでて
そのあとに即興でなにかを投げて
返ってくるなにかをみる


余韻を残すことなく消える


あとで語られないように
いま要るだけの言葉が
あなたのすべてであり
わたしのすべてであるように




覚えておいてほしいものに限って
あなたは忘れるだろう
忘れてほしいものに限って
あなたはツイートしてばらまくだろう


いずれにしても
わたしはそこにいない


憧れは侮蔑に代わり
侮蔑は嫉妬に代わり
やはりあなたはなにも知ることはなかった


欲情をファイルして
好きなときに取り出しては愛でる
記憶はどこまでもあなたのためのもの
顧客情報が作り上げた自画像に浸食されて
あるがままの姿すら認めるのが難しくなっている


通りすがりから始めるには
もう手遅れかもしれない

あるいは電気が止まれば
誰もが通りすがりから始めるしかない

必要な言葉だけが取引され
余韻を残さずに別れてはまた出会う

結局のところ
そうすることしかないのだ
そうすることから逃げる知恵だけが
生きる全てになってしまっているけれど




必要な言葉はこれですべて
余韻を残さずに消えることが
今度こそわたしはできただろうか


自由詩 通りすがりの Copyright 深水遊脚 2014-03-03 13:35:12
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