回転寿司
イナエ

小声で頼んだ並みのマグロが
おおくきなって店中を駆け回る
こちらの身が小さくなるとき
届けられた笑顔 
心ばかりのサービスを 
言葉で返る寿司職人
すべすべの掌が握って
板に乗った寿司の冷たい暖かさ

仮想の中で暮らす人は
人の笑顔が
うっとおしいというけれど

目の前に立ちふさがるディスプレイに
現れるメニューの写真
指先でつつけば
移動するベルトの上に載って出てくる
画像そっくりな寿司

コンベアーに運ばれる部品のようで
ディスプレーの奥の空間で
舎利を握ったのは何者
ネタをのせる手袋の中味はどんな指
会話を求めたネタがぼくの中を回転し
ディスプレイの上で指先がつんつん跳ねる
人のふれあいを拒否したにぎりの
清潔な冷たさ



自由詩 回転寿司 Copyright イナエ 2014-03-01 14:55:24
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