とお数えたら何が見える
藤鈴呼




ゆっくりと とお 数える声が 
聞こえた

い〜ち に〜い さ〜ん し〜
昔 聞いたような 声だ

やさしそうな 女性の声
きっと 今の わたくしよりも
随分と 年下の

だけど 私は 知ってる
この声の 元が
遠い 遠い時空を
超えている ことに

肥えて しまったのだ
空気も 時間も 肉体も

ここは 風呂場ではないのに
立ち昇る 蒸気が見える

笑顔だって 上等
そう 上機嫌に重ねた バブル

バブルと言う 名前さえ
知らぬ世代の 我が子を

ゆっくりと 握りしめて
もう一度 名前を呼ぶ

戻って来い
還って来い
蘇れと

何度でも
叫ぶ


自由詩 とお数えたら何が見える Copyright 藤鈴呼 2014-03-01 08:56:54
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