塀のある暮らし(2014.2)
新嶋樹

つまんないもので塀を築いて
おもろいものには目もくれず
いったいなにが楽しいのと聞いたら
「これが人生よ」と言われた

安いものを至上と信じて
ありきたりの色を重ねて
どのへんに君のこだわりがあるの
「明日も早いから」と眠ってる君よ

うずたかく積み上げる途中
透明の線がもう見えてるけど
そこまで積んだって結局
塀をこえてくるものには無力だ

人生を楽しく生きていくための
時間は限られている
それなら塀は置いといて
変なオブジェでもつくろうよ
げらげらと一日中
笑っていられるたぐいの

◇◇◇

君が世界の外にいたころ
そんな風に思っていた自分が
今、君の毎日の働きを見ながら
掃除や洗濯や料理を見ながら
暮らしの味をおいしく呑みこんでいる

日々生きていくことの
日々の部分の細かさに
おえつする日々だったけど
それを「つまんない」と言うことは
生きてる君を殺す行為だ

変なオブジェをつくってひとり
ひとしきり笑ったあとに
減った腹を満たす
その満ちる腹は君の手つきから生まれる

君は人生を
丁寧に生きているのだ
人ひとり分の腹の外に
もうひとり分入れる塀をつくって

その気高さを見ながらにして

いったいなにが楽しいの
などと聞いてよいものだろうか
人生を雑に生きてきた者の
つまらないオブジェが笑っている

暮らしの味を知る
塀づくりに加わる
今日の次に明日が来る
そのために眠る


自由詩 塀のある暮らし(2014.2) Copyright 新嶋樹 2014-02-28 22:14:49
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