◆美しい修羅
千波 一也


ひとつ、ふたつ、とらえた蝶を蜘蛛の巣へ放った自分の背中はみえない



泣いているあの子を眺めていたいのに邪魔だてをするあの声あの手



丁寧に積み上げられたミニチュアの城を崩して恍惚となる



人前で恥ずかしげもなく言えるかな卑猥なワードと無慈悲なあだ名



危険だと知っているから火をつけるロケット花火をアイツ目がけて



受精する仕組みを知った夏の日は不潔と思ったすべての妊婦を



ライターで燃される雑誌の中の美女まさか末路が雑木林とは



閉じ込めたフワフワ仔犬の鳴き声のか弱さゆえになお閉じ込める



罪のない花の首断つ心地よさ我が手を汚さず棒きれを振り



美しい修羅を最後に見た夜は十六夜知らぬ十五夜のころ







短歌 ◆美しい修羅 Copyright 千波 一也 2014-02-24 22:51:05
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【定型のあそび】