妖艶な虫かご
藤鈴呼




溶けたカラメルが
ゆっくりと べったりと 
頬に 絡みつく

気持ち悪いから
手を払いたいのだけれど
腹が痛いと 繰り返すので
邪険にも 出来ない

ジャンケンで決めようとした宝くじが
空くじに変わった瞬間
空の色も 妖艶に 代わった

薄い セロファンを
はしたなく 切り捨てたような
一部分だけが
リアルに 光る

ニヤリと笑う 眉の形に伸びた
飛行機雲が
前方で 旋回を繰り返す

説法など もう 
聞きたくは ないと 言うのに

カラメル カラメル 空メール
絡めた筈の ユビ 離レール

こんな筈じゃなかったと言う名の列車が
あんな筈でもいいじゃないかと言う名のレールを
小刻みに 震わせながら 進んで行く

何故 震えて居るのか

笑っているのか
寒いのか
不安なのか
どれなのですか

プリン状のクッションが
かろうじて の 理性を
繰り返し 打ち返しては
微笑みを 取り戻す

一瞬だけ 戻した口角は
次の瞬間
どのサーブより 恐ろしい角度で
歪むのだ

したたかに
はっきりと
二度と 鋭角には 戻るまい

ラケットの形が 網アミの理由を
知っていますか

虫鳥籠にだって
隙間が 有るでしょう
小さな猫が
のほほんと 往来する 出入り口

そのくらいの口元でならば
我慢できます

あなたは ただ ゆっくりと
蒸される瞬間を
蒸し返さぬように
虫鳥籠の角度を
替えて 待てば いい

丁寧に セットして
笑いながら 待てば 良いのです


自由詩 妖艶な虫かご Copyright 藤鈴呼 2014-02-23 13:16:35
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