絶滅のための夜
末下りょう


暗い宇宙のフカクから 、つめたくやわらかな雪は
降り積もる


目線と
平行するように 、
コンクリイトの
壁を這う
白の
ヤモ



星のような手足と三日月のような尻尾



空洞としての
巨大な
瞳孔を
縦に
開閉させて 、


街灯の光を溶かそうとする白雪の
構成を解読した



濡れた
壁面に
吸盤を 、うまく
使い
反転し


そこから
冷静さを酷く持て余した
路面の
靴跡に


鉛直の視線を
離す



鉛直
世界



無限の片隅に 、希薄な血色の、肩を
あずけ


不完全な
直角三角形の
斜辺となり


水死体のような言葉をカタリ


彗星を
真似る




硬くこわばった白い首筋に 白のヤモリは 、移り
擬態すると
物思いに
耽る



果てしない闇を
見上げれば
すべては



静かな衝突から
静かに
静かに
始められ


絶滅のための夜が更ける


三日月のような
尻尾だけを
残して


自由詩 絶滅のための夜 Copyright 末下りょう 2014-02-22 03:53:17
notebook Home 戻る  過去 未来