夏の午後
寒雪

夏の暑い午後
ぼくを見下ろす太陽


日傘もささずに
火傷したアスファルト


行き先の縄張りを
我が物顔で主張する陽炎


流れ落ちる汗がぼくのこころから想いのかけらを
奪い去りこぼれ落ちていなくなってしまって
すっかりぼくのこころの中はがらんどうになって
そこにいる自分がすっかり色あせてしまって


遠くで聞こえる
ばらまかれた打ち水


自分の耳にだけ
しめやかに伝わる吐息


見上げた空に
慌ただしく駆ける雲


失って
失って
失って
それでもまだこの世界をしっかりと踏みしめるぼくの足
汗も出なくなってすっかり乾いてしまったシャツを
触ってみるとやっぱり手触りを感じてしまうぼくの体
もうすっかりなにもかもなくなってしまったと思っていたのに
いまだ考えるのをやめずにとどまり続けるぼくの気持ち


夏の暑い午後
太陽の下をやっぱり歩いているぼく
助けにならないそよ風が
おぼつかない足取りでぼくの後についてきた


自由詩 夏の午後 Copyright 寒雪 2014-02-21 13:48:52
notebook Home 戻る