ビックカメラ
花形新次

震える身体を
抱え込むようにして
きみを風から守った
軒先の松に積もった雪が落ちる
ハッとして振り返った
ひと気のない路地裏
闇はどこまでも深く
すべての音は吸い込まれていく

ジャケットの内ポケットに
手を伸ばした
指先に感じる確かな手応え
頬に当たる息は
アルコールと微かに松脂の匂いがした

ヴィトンから静かに抜いた
およそ5万円
思ったより少ない
しかし、カードがあった
まだ開いてる家電量販店はある

きみにさよならを言い
その辺に転がして
駅近のビックカメラに向かう
タブレットなら沢山持ち運べる
そうだ、タブレットにしよう


自由詩 ビックカメラ Copyright 花形新次 2014-02-18 12:13:31
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