いつか、降る
千波 一也


いつか、降るだろう

雨とは呼べない
くるしい水や

雪とは呼べない
つらい花弁が

いつか、降るだろう

きっと
だれもが望む形は
思いがけずに
姿をかえて
しまう

おそろしいものたちと幸福は
些細にしか違わないのだろう

だれもが望む形は
だれもが忘れてしまえる形
だれもがかえてしまえる形

嘘も真実もなく
終わりも始まりもなく

だれもが平等に
描けてしまう
語れてしまう

だから、降るだろう

星とは呼べない
あわれな営み

月とは呼べない
うつくしい陰

こころ当たりはないか

きみに
きみの周りに
きみの周りの
きみに

鳥とは呼べない
閉じられた夢

風とは呼べない
偏重の記憶

いつか、降るだろう

憂いと妬みと自己愛と
逃れと責めと他人顔

頼みと縛りと自己愛と
秘匿と保守と他人顔

ひとつの国が
ひとつになることは
難しいことではない

固まり方さえ
問わないのなら
難しいことではない

けれど

涙とは呼べない
大粒な渦

嘘とは呼べない
周到な罠

いつか、降るだろう

いつか、と言わず
もうじき、
すぐにも、
落とされるかも知れない

慣れてしまえば良い、と
言えなくもない

完全には

だれも
完全には
道をたどれないまま

鏡とは呼べない
出来すぎた坂

己とは呼べない
出来すぎた虚ろ

このままでも
このままでなくても

それは
さほど意味をなさない

意味をなさない
差異ならば

いつか、降るだろう

いつか、必ず

いつか、疑いの余地もなく

いつか、だれにも平等に

降るだろう

伏すだろう

いつか、









自由詩 いつか、降る Copyright 千波 一也 2014-02-17 11:58:27縦
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