梨畑
……とある蛙

冬の下総台地の端に
小さな家一軒
剥き出しの枝と幹だけの
梨畑の中に
小さな家一軒

落葉高木の梨の樹
畑の樹は灌木のようで
海軍レーダーのように
針金が渡されている

白い季節の通り過ぎるのを待ち
付近満開の桜並木の花片が
散り始める頃
梨畑は一斉に白い花が咲き誇る

小さな家の小さな部屋の住人は
それを眺めながら
午睡から目覚める。
前脚をまっすぐ伸ばし
後ろ足に力を入れた前傾姿勢で
思いのほか大きなアクビをする

白い花には蜂や蝶
ふわふわと飛び回り
梨の受粉を手助けする
しかし、
梨を受粉させているのは
専ら人の手なのだが

白い梨畑の下を
黒い猫が歩く
尻尾を立てて
リズミカルに

そんな春を思いやる
雪の日の午後です



自由詩 梨畑 Copyright ……とある蛙 2014-02-14 13:38:40
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